漫画家楳図かずおは、独特の絵のタッチでホラー漫画を中心に少年ものや少女もの、ギャグ、SFなど幅広いジャンルの漫画を執筆しています。
「漂流教室」は1972年~1974年に「週刊少年サンデー」にて連載。
この漫画はSF的要素に楳図かずお独特の恐怖を取り入れたスケールの大きい漫画です。
1987年に劇場公開されます。
2002年にはテレビドラマで「ロング・ラブレター~漂流教室~」が放送されました。
漫画・映画・ドラマと話題になる「漂流教室」ですが、漫画の最後に疑問をもたれています。
「ユウちゃんその後は?」「未来人とは?」「生存者はいたのか」
そして、最後はどうなったのでしょうか?
漫画「漂流教室」を検証します。
Contents
楳図かずおの最高傑作「漂流教室」
「週刊少年サンデー」で1972年23号~1974年27号まで連載されます。
楳図かずおの元々の持ち味である恐怖漫画のテイストに加え、意表をついた物語の展開も読者に衝撃を与えました。
楳図かずおは本作も含めた一連の作品で1975年に第20回小学館漫画賞を受賞しています。
恐怖のSF漫画「漂流教室」とは⁈
主人公高松翔は、大和小学校の6年生。
ある日、翔は母・高松恵美子とケンカをしたまま学校に行き、授業中に激しい地震がおこります。
揺れはすぐにおさまりますが、学校の外は岩と砂漠だけの荒れ果てた大地に変貌していました。
突然の出来事に皆パニックに陥り、教師たちは全員死んでいき、荒廃した世界の正体が文明の崩壊によって滅んだ未来の世界だと知ります。
残された生徒862人は大和小学校を拠点とした「国」を築き総理大臣に翔がなりました。
元の世界に帰る為に団結して、困難に立ち向かいます。
しかし、飢餓や未知の事象に対する恐怖心からくる狂気や内部対立、伝染病の蔓延、唯一生き残った大人である関谷の暴虐、荒廃した未来に棲息する未来人類の襲撃などの脅威により、児童たちは日に日に亡くなっていった。
更に、学校をタイムスリップさせる原因となった手製のダイナマイトによる爆発事件の犯人が翔であったというデマが流れ、翔は次第に孤立してしまう。
翔は5年生の少女・西あゆみのもつ不思議な力で、時空を超えて母とコンタクトを取る事ができた。
その後、自らの意思で学校を出て行き、瀕死の状態で戻ってきた女番長の口から「天国」の存在を知らされる。
周囲が子供達の帰還を諦める中、息子の帰還を信じる翔の母は、西あゆみの不思議な力によって未来にいる翔と仲間達に必死の思いで援助の手を差し伸べ続けていた。
飢餓による苦しみと、翔の存在を疎み対立する同級生の大友らのグループとの抗争の激しさはついに頂点に達し、狂気に駆られた子供達は無残な殺し合いを始めてしまう。
楳図かずおからのメッセージ
「漂流教室」は社会問題が描かれていました。
未来にタイムスリップした大和小学校の周りは、学校の外は岩と砂漠だけの荒れ果てた大地。
空は学校一帯を覆わんとする高濃度の光化学スモッグの雲。
水はなく、風も無風状態です。
植物や動物・昆虫は不気味な姿で毒があり襲い掛かってきました。
この事は楳図かずお先生からのメッセージではないでしょうか?
1960~1970代初め頃は公害が大問題となります。
当時は光化学スモッグで目や喉の痛みを訴えたがあり、1973年には光化学スモッグ注意報の発表延べ日数が300日を超えた事もありました。
当時話題のウルトラマンやゴジラでも公害やゴミから生まれてきた怪獣が作られ、当時の社会問題を物語っていた様に思えます。
作中はペスト(伝染病)により死者が出ます。
現代ではコロナウィルスが世界的に流行しました。
火山や大地震はいつの時代になっても人々を恐怖と不幸に陥れます。
森林の伐採により砂漠化が進んでいる事も問題ではないでしょうか?
近年、天気予報でも取り上げられるようになった「黄砂」も砂漠化が原因の一つの様に思います。
この様な環境問題を楳図かずおは訴えていたのではないでしょうか?
漂流教室最後を検証
残された862人の生徒は、高松翔を総理大臣として何とか元の世界に帰ろうと団結して立ち向かいます。
仲間の反乱や未来に生きる謎の生物。
未来人とは?ユウちゃんはどうなるのでしょうか?
漂流教室の最後を検証します。
未来に生きる謎の生物
未来では異形な形の生き物が生息していました。
未来人類 未来世界に適応した異形の人類、蜘蛛に近いのか?背中に大きなコブがあり、コブに大きい目があります。未来生物の生き血を吸う。言葉を喋り、儀式を行ったり、地下鉄も動かす。生徒で未来の毒キノコを食べた者数名が未来人類に変身していった。未来人類は映写機で記録映画を観てました。映像には奇形の魚・オニヒトデの大量発生、母親のえい児殺害の新聞記事、掘り起こされた布の中に背中に大きなコブのある生き物(えい児?)、そして、人類滅亡の記録映画でした。
未来オニヒトデ 巨大で生徒を食べる。体内に化学物質があり、燃やすと有害な煙が出る。
巨大生物 ミミズの巨大化した様な物で、においで未来人類や未来オニヒトデをおびきよせて食べる。
また、東京駅の地下に人類最後と思われる生存者がいました。人肉を食べて生きていた様ですが、翔たちを見てショック死しました。
「漂流教室」最後は?ユウちゃんその後は?
「天国」は未来の科学力で築かれたレジャーランドの残骸の残る場所でした。
「天国」のコンピュータに元の世界に戻る方法を聞くと、時間の壁が破れた場所に衝撃をあたえれば良いと答えます。
翔は大友グループに「ダイナマイトを仕掛けたのは僕だ」と噓をついて、自分を追いかけてくるように仕向けました。
小学校に戻って来て、噓をついた事を白状してダイナマイトを作った者は名乗り出てほしいと告げる。
翔が殺されそうになった時、大友が自分が作ったと告げます。
大友は学級委員長や成績が一番でいなければならない辛さから、学校をなくそうとダイナマイトを仕掛けた。
学校の校庭でみんなで手を取り輪になって、帰る事を精神集中しその時に輪の中央でダイナマイトを爆発させます。
気は失っているが西あゆみの不思議な力で翔は、母にお願いして日本中の人々にも頼みました。
高松恵美子はテレビ局に乗り込み、日本中に訴えます。
その瞬間爆発しました。
しかし、消えたのは輪の中央にあったユウちゃんの三輪車だけでした。
翔を支えてきた川田咲子が西あゆみへの嫉妬から、元の世界に帰りたくないと思ってた様です。
責任を感じて川田咲子は学校から出ていく。
それを大西が追いかけ連れ戻します。
学校周辺では、ダイナマイトの爆発で地震が起き火山活動が起き始めました。。
大西と咲子は火山の爆発で水が流れ出して、風が吹いてきた事に気がつきます。
生徒の死体からは草の芽が生えてきました。
翔達は火山の噴火を利用して再度チャレンジしますが失敗。
翔達はこの未来世界で生きていく事を決心します。
そこへ空からロケットが降り立ってきました。
中には母・高松恵美子からの手紙と翔達に必要な物資が入っていました。
翔達はユウちゃんだけは帰らせることにします。
ユウちゃんは勉強してこんな世界にならないようにすると約束。
未来世界が変わる事を生徒達は期待しました。
翔はユウちゃんに未来に来てから書いていた日記を渡し、高松恵美子に届ける事をお願いします。
再度輪になって、念じてユウちゃんは消えていきました。
元の世界に戻って来たユウちゃんは高松恵美子に日記を渡し、先に戻った三輪車に乗り自分の家に帰ります。
ボロボロになったユウちゃんに大人が声を掛けますが自分の力で帰っていきました。
母・高松恵美子は翔の日記を読み、未来にいる翔の為に頑張る事を誓います。
まとめ
漂流教室の最後を検証。
ユウちゃんその後は?未来人とは?生存者はいたのか!
未来にタイムスリップした大和小学校の862人の生徒が劣悪な環境の中で生き延びていく話でした。
これは、公害などの人間がもたらした悪い未来の姿を楳図かずおは描いたのかもしれないですね。
未来人は恐ろしかったです。
未知の恐怖と飢餓により精神は極限状態に追い込まれていきました。
作中は盲腸の手術を子供達だけで行うシーンもありました。
ユウちゃんは過去に戻り勉強して偉くなりこんな世界にならないようにすると約束し、元の世界へ帰っていきます。
ユウちゃんが帰った後は翔達の事は描かれませんでしたが、未来が変わったかもしれないですね。
生徒とユウちゃんを含め、生存者は95人でした。(楳図かずお「漂流教室」異次元への旅)
環境破壊や疫病など色々なメッセージ性の強い作品だと思います。
未来世界が「漂流教室」の様にならない事を望みたい。