1970年代、プロテインはボディービルダーやパワーフリーターなどの限られた層にしか知られていない存在でした。
1990年代になると野球、サッカーといったメジャースポーツ選手が利用し始めたことで市場が拡大。
2000年代に入り、健康ブームは更に加速し、様々な用途で老若男女問わずプロテインを活用する時代となりました。
「日本人の食事摂取基準」には、タンパク質の推定平均必要量、推奨量、目安量、目標量が示されていて、推奨量では男性は18~64歳で一日65g、65歳以上で60g、女性は18歳以上で50gとなっています。
フレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)予防のためにも積極的に摂取したい栄養素(タンパク質、ビタミンD、カルシウム)の一つと言えるでしょう。
これがスポーツ選手や定期的に運動を行なう習慣がある人であれば、体重1㎏あたり1.2~2.0gのタンパク質が必要になります。
筋トレをしている方の必須サプリメントとも言えるプロテインですが、摂取すると「トイレが近くなる」との声を聞いた事ありませんか?
何故、トイレが近くなるのか?果たしてプロテインには利尿作用があるのでしょうか?他に原因があるのではないでしょうか?飲む回数や量、飲むタイミングに原因があるのかもしれません。
プロテインを摂取しても、トイレが近くならないようにするためにはどうすればよいのか、飲む回数や量、タイミングが関係するのか?はたして利尿作用があるのか?これらの原因を深掘りしていきたいと思います。
Contents
プロテインに利尿作用はあるの?
プロテインを摂取することの疑問の一つではないでしょうか?「実際に近くなった」、「頻尿になってしまった」という声もあるみたいです。
本当にプロテインが原因なのでしょうか?そもそもプロテインはタンパク質の塊りの様なもので、薬ではありません。
では、何故この様な声が聞かれるのでしょうか?もしかしたら、プロテインの摂取の仕方(量や飲み方)か、もしくは、体の方に原因があることも考えられます。
いまや一般の方の利用も増えてきているプロテインですが、いざ使ってみようと思うと、「何かデメリットがあるのではないのか?」と不安に思う方もいるのではないでしょうか?
種類によっては利尿作用のある商品もある?
栄養補助食品のプロテインですが、配合されているタンパク質には、牛乳由来の「ホエイ」や「カゼイン」、豆由来の「大豆(ソイ)」などがあり、タンパク質の種類によって吸収スピードが異なり、製品によっては数種類ブレンドされている物もあります。
ホエイプロテインは、乳清と言って、ヨーグルトの上澄み液に溶け込んだ乳たんぱく質を抽出したもので、吸収のスピードが早くスムーズなため、運動後のタンパク質の補給には効果的でしょう。
カゼインプロテインは、牛乳に酸を加えると水に溶けないタンパク質が、ヨーグルト状に固まります。
この乳タンパク質から作られていて、チーズなどの原料に使われるものと同様で、胃の中にとどまり、ゆっくりと時間をかけて吸収・消化されていくので腹持ちが続くでしょう。
夜の捕食として補給したり、ダイエット中の間食として利用するのもお勧めです。
ソイプロテインは、植物性のタンパク質である大豆から作られています。
グルタミンなどのアミノ酸が豊富で脂肪が少なく、カゼインプロテインと同じく、吸収がゆっくり行われるので、ダイエットなど減量中のタンパク質の補充に向いていると言えるでしょう。
これらのプロテインはタンパク質を豊富に含んでいて、体内で消化・吸収される際に、最小単位の「アミノ酸」に分解されます。
そこから体内の設計図であるDNAを基に再びタンパク質に組み替えられるという過程をたどるので、体内に入ったタンパク質が、分解する時にできた老廃物を腎臓が体外に排出するので、おしっこが近くなるのでしょう。
プロテインを摂取するときは水分も多めに摂取してください。
そうしないと腎臓に負担がかかり、また、タンパク質を必要以上に摂りすぎると、栄養として吸収されず、邪魔な物として体外に排出されるでしょう。
タンパク質を消化する化学反応の過程で、摂りすぎた余分なタンパク質は、窒素となりアンモニアに変換され、アンモニアは体にとって有害物質なので体外に排出する必要があり、肝臓でアンモニアを無害な尿素に変え、腎臓で尿として体外に排出されます。
そもそも利尿作用のある成分は含まれてるの?
利尿作用のある飲み物の共通して含まれている3つの成分があります。
アルコールには、尿の量を減らす働きのあるホルモンの分泌を抑制する効果があるため、アルコールを摂取するとトイレが近くなるかと思います。
数ある成分の中でもアルコールは最も利尿作用が強いため、摂取する際は注意が必要で、飲んだ分だけ利尿作用が活発になり、また、アルコールは体温を上昇させて発汗作用もあるため、尿だけではなく皮膚や息からも水分が失われてしまうでしょう。
コーヒーやお茶などに含まれているカフェインは、体内の老廃物と結合し体外に排出する働きがあります。
適度に摂取するとデトックスやむくみ解消に効果が見込まれ、また、眠気解消や集中力を上げる働きもありますが、過剰摂取により、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠、下痢、吐き気などの健康被害を引き起こす可能性があるかもしれません。
牛乳には利尿作用のあるカリウムが、100㎖あたり150㎎含まれていてます。
プロテインを牛乳で溶かして飲むと、牛乳の利尿作用と体内に入ったタンパク質を分解する時にできた老廃物を腎臓が体外に排出するので、利尿作用が強くなる可能性があるので注意してください。
プロテインの飲む回数や量・タイミングは関係あるの?
人の体は一度に大量のタンパク質を代謝することができません。
そのため、一日に必要な量を3回の食事または捕食を含めた4~5回に分けて補給します。
食事で摂ったタンパク質は筋肉に使われるだけでなく、皮膚、髪の毛、臓器、細胞など人体の多くを構成し、常に一定量を必要としているためコンスタンスに補給する事を心掛けましょう。
実際に飲む回数や量・タイミングを変えてみた!
運動後45分以内:筋力アップをサポート
運動後45分以内は「ゴールデンタイム」と呼ばれホエイプロテインを摂取することをお勧めします。筋トレやスポーツなどの激しい運動の後は、筋肉を構成している筋線維が傷つきます。
筋線維が傷つくと、これを修復しようとして筋線維を作るタンパク質の合成が増加するので、筋線維を作るタイミングで材料が不足していれば、筋線維が上手く修復出来ません。
筋線維を修復するタイミングで、栄養バランスのとれた食事やプロテインを摂取し、タンパク質を補給しましょう。
効率よくタンパク質を体内に吸収すると、筋線維の早い修復、増強が見込め、さらに、運動後45分以内であれば、筋力へのアミノ酸輸送量が3倍にアップすると言われています。
ホエイプロテインと同時に、炭水化物(糖質)を摂取するようにしましょう。
即効性の高いエネルギーを補給してあげると、さらに効果的です。
朝食メニューに加えることで効率的に!
朝、起床したばかりの体の状態は栄養不足の空腹状態でしょう。
朝食のタイミングでプロテインを摂取すると、不足しているタンパク質を効率よく吸収できます。
卵料理、焼き魚などタンパク質が豊富な朝食であれば、プロテインは補足程度の量でも差し支えありません。
パンやシリアルなどタンパク質の量がすくない朝食であれば、1日のタンパク質摂取目安量を考慮しプロテインの量を調節して摂取してください。
就寝前に飲むことで成長ホルモンの働きを促します
睡眠をしている間、人間の体は多くの成長ホルモンが脳下垂体から分泌されていて,成長ホルモンは体の機能をコントロールする役割や筋肉量を増やす役目を担っています。
成長ホルモンが活発に機能しているときにタンパク質を補う様にすると、更にタンパク質の吸収を高めていき、筋肉量を増やす事ができるでしょう。
最適な時間は就寝する30分から1時間前を目安として飲むことがオススメで,理由は成長ホルモンの分泌のピークが、就寝後30分から3時間後と言われているからです。
プロテインは摂取してから体に吸収されるまで時間がかかるので、その30分から1時間前に飲んで、成長ホルモン分泌のピークに合わせましょう。
注意すべき点
タンパク質を一度に沢山摂取すると、消化・吸収しきれないとお腹の中でガスが発生したり、下痢や便通悪化など腸内環境が乱れる原因になります。
その場合は摂取量を減らすなどの工夫をしてください。
1回に摂取できるタンパク質は約40g~50g程度と言われています。
1日の必要なタンパク質が60gの方は朝食、昼食、夕食でだいたい20gずつ摂取できると理想です。
朝昼夜の三食で毎食タンパク質を均等に摂取するのと、朝昼夜の三食でタンパク質を偏って摂取した場合とでは、前者の方が、筋タンパク質合成速度が速いというエビデンスもあります。
タンパク質は体の20%を占める重要な栄養素なので、しっかり体に吸収されるよう、一度に摂取するのではなく、分けて摂取する事が望ましいと考えられるでしょう。
そもそも水分を多く摂るからトイレが近くなる!
健康な成人は毎日、体重1㎏につき役目35mlの水が必要と言われていて、体重50kgの人は1.7ℓ、60㎏の人は2.1ℓ、70㎏の人は2.4ℓ必要で、体重が多いほど必要な水分量も増えます。
水の飲みすぎは、水を十分飲まない事と同じくらい悪影響があり、推奨される毎日の摂取量は、腎臓と心臓が対応出来る料を反映していて、毎日飲む必要な水の量は、年齢や食事、活動レベル、天候などの影響も受けるでしょう。
また、高齢者は喉が渇いたと感じることが減り、全体に摂取量も下がってしまいます。
これにより、心臓血管の問題から免疫系の低下にいたるまで、様々な影響が出るので、脱水症状をさけるため毎日1.5ℓの水を飲むことが理想的でしょう。
タンパク質は筋肉量を保つのに大切ですが、大事な血液を保つ事や、水分量をキープする事にも役立ちます。
膀胱の容量は最大限500㎖で、150㎖ほど溜まると尿意を催してくるので、適切に水分補充していると2時間に1回はトイレに行きたくなるでしょう。
それ以上の頻度でトイレに行くことは頻尿の可能性があるかもしれません。
また、睡眠中は尿の量が減り、膀胱の容量も増えるので一度もトイレに起きないのが普通ですので、夜2回以上トイレに起きることは頻尿が疑われます。
喉が乾いている時はすでに軽い脱水症状でしょう。
チェックしたいのは尿の色で、正常ですと薄い黄色ですが、脱水が進むほど濃い黄色になっていきます。
夜中にトイレに起きて排尿すると、日中より濃い黄色なのは、寝ている間は水分補給が途絶え、脱水しているからかもしれません。
ただし、例外的に薬やサプリメントなどの成分で尿が濃くなるケースもあります。
まとめ
前提としてプロテインは「食品」なので、利尿作用はないと思われます。
自分の一日のタンパク質の必要量を理解し、出来るだけ食事から摂取して、食事で補えない分をプロテインから摂取することが望ましいでしょう。
プロテインを必要以上に飲む回数や量を多く摂取したり、必要のないタイミングで摂取したりするとおしっこが近くなるかもしれません。
おしっこが近いということであれば、頻尿または肝臓、腎臓に異常、その他の病気の可能性もあるので医師に相談するのも良いでしょう。
また、プロテイン以外にサプリメントなどの「健康食品」が販売されていますが、それらは健康な人を対象としています。
持病をお持ちの方は、必ず医師に相談のうえで判断する様にしてください。
プロテインは「健康な人」を対象に製造されている食品です。
プロテインユーザーにできることは、健康診断などで自身の自身の健康状態をチェックしながら、プロテインを適切に扱う事ではないでしょうか。
プロテインを活用する事にあたり、「メリット」よりも「デメリット」を知る事がとても重要で、両方を認識した上で活用することが大切ではないかと思います。